
● 増えている肺炎
肺炎はついに日本人の死亡原因の第3位になりました。年間約11万人の方が肺炎で亡くなられています。
年齢別にみると65歳以上の老年者が94%を占めます。そしてその原因のほとんどが誤嚥にあることは実はあまり知られていません。
● 誤嚥性肺炎のメカニズム
さて人はなぜ肺炎にかかるのでしょうか?
高齢者の肺炎の場合、口腔内に存在する細菌を誤嚥することで発症することが多いのです。
ここでいう"誤嚥"とは多くの方が考える食事の誤嚥(顕性誤嚥:けんせいごえん)ではなく夜間に寝ている間に起きる誤嚥(不顕性誤嚥:ふけんせいごえん)のことを意味します。不顕性誤嚥は決して珍しいことではなく、多くの人は健康な人も含め夜間唾液を誤嚥しています。
肺が正常であれば多少の誤嚥で肺炎になることはありません。また全身状態が良好であれば大丈夫です。
逆に肺の病気(肺気腫、気管支拡張症、間質性肺炎など)があれば肺炎になりやすく、また糖尿病や悪性腫瘍、ステロイドや免疫抑制剤内服など全身の免疫力が低下している場合も肺炎になりやすいのです。さらに脳梗塞後遺症やパーキンソン病などのように嚥下が障害されやすい病気の場合誤嚥する量が増えますので肺炎を起こしやすくなります。
● 誤嚥性肺炎の予防
肺炎の予防としては肺炎球菌ワクチンによる予防の他に、生活習慣の見直しや薬物による予防法があります。
厚労省による肺炎予防推進プロジェクトに謳われている肺炎予防6カ条というものがあります。
- 1. 規則正しい健康的な生活をおくりましょう
- 2. 喫煙者は禁煙しましょう
- 3. 誤嚥をふせぎましょう
- 4. 口の中を清潔に保ちましょう
- 5. 基礎疾患を治療しましょう
- 6. 高齢者の場合肺炎球菌ワクチンの接種をかんがえましょう
という内容です。
夜間寝るときに入れ歯をつけたまま寝ることや、歯周病や虫歯を放置しておくことは口腔内の細菌を爆発的に増やしますのでやめましょう。また、薬物療法である程度予防することも可能です。